三角形の頂点と垂心の間の不思議な対称性

垂心には実に不思議で魅力的な数多くの性質があります。おそらくその原因の1つは、今回のタイトル通り「三角形の頂点と垂心の不思議な対称性」にあるのではないか、と私は思っています。

垂心とは、三角形の各頂点から対辺へ下ろした垂線の交点でしたが(「三角形の五心の定義」参照)、あくまで、3つの頂点から定まる「ある特殊な点」でしかないように思えます。ところが、この点は一種の4番目の”頂点”のような振る舞いをしたり、逆に、頂点が”垂心”のような振る舞いをすることがあります。その意味で3つの頂点と垂心、合わせて4つの点は互いに対等に働くように解釈できることがあります。

事実、次の事柄が成立します。

(1) 僊BCの垂心をHとすると、傳CH、僂AH、僊BHの垂心は、それぞれ点A,B,Cである。

証明は難しくありません。垂心の定義を思い出しながら、それぞれの三角形の垂心を求めれば、自然に証明できると思います。

以下の図1は、cinderellaで作成しました。内部をオレンジ色で塗られた三角形A'B'C'がありますね。各頂点から対辺へ垂線(青色の線)を引き、その交点が垂心H'です。頂点A',B',C'のどれかを左クリックしながらドラッグすると、図形を動かすことができます。

図形を動かすと、内部が3色で塗り分けられた合同の僊BCが隠れていることに気付きますね。下に隠れていた僊BCは固定され、動きません。

上の性質(1)を確かめるために、頂点A',B',C'のどれかを左クリック、ドラッグして、下の僊BCの垂心Hの位置まで移動させてみましょう。すると、上の三角形僊'B'C'は傳CH(緑色)、僂AH(黄色)、僊BH(水色)のどれかに重なります。このときの上の三角形の垂心H'の位置に注意してください。おそらく、下の三角形の頂点A,B,Cのどれかに重なっていると思います。すなわち、傳CH、僂AH、僊BHの垂心は、それぞれ点A,B,Cに一致すること(性質(1))が、確認できます。

Javaをインタラクティブ作図用に使えるようにしてください。

図1

性質(1)によって、頂点と垂心が互いに対等であることが分かります。さらに、この対等性、あるいは対称性の考え方を発展させてゆきましょう。

僊BCの各頂点から対辺への垂線の足をそれぞれ点D,E,Fとおきます。頂点A,B,Cと垂心Hの交換により、対応する点D,E,Fはどのように置き換わるでしょうか?

例えば、点Aと点Bを交換すると、点Aから辺BCへの垂線の足Dは、点Bから辺ACへの垂線の足Eに置き換わります。つまり、点A⇔点Bにより点D⇔点Eが誘導されます。

あるいは、点Cと点Hを交換すると、点Aから辺BCへの垂線の足Dは、点Aから辺BHへの垂線の足Eに置き換わります。つまり、点C⇔点Hにより点D⇔点Eが誘導されます。このように考えてゆくと、頂点や垂心の置き換えは、次のように点D,E,Fを伴って置き換わります。

(1) A⇔BのときD⇔E (2) A⇔CのときD⇔F (3) B⇔CのときE⇔F
(4) A⇔HのときE⇔F (5) B⇔HのときD⇔F (6) C⇔HのときD⇔E

早速、頂点A,B,Cと、頂点から対辺へ下ろした垂線の足D,E,F、垂心Hの間の命題へ、これらの間の対称性を応用してみます。

点A,F,H,Eは同一円周上にある。

この命題は相対する角∠AFHと∠AEHがどちらも直角であることから導かれます。置き換え(1)から(6)を適当に施すことにより、次の命題が得られます。

置き換え「A⇔B、D⇔E」により、「点B,F,H,Dは同一円周上にある。」
置き換え「A⇔C、D⇔F」により、「点C,D,H,Eは同一円周上にある。」
置き換え「B⇔H、D⇔F」により、「点A,D,B,Eは同一円周上にある。」
置き換え「C⇔H、D⇔E」により、「点A,F,C,Dは同一円周上にある。」
置き換え「B⇔H、D⇔F」と「A⇔C、D⇔F」により、「点C,F,B,Eは同一円周上にある。」

置き換え(1)から(6)に頼らなくとも、これらの命題は容易に証明できます。前半2つの命題は頂点の対称性から自明で証明の必要すらありませんが、特に頂点と垂心の置き換え(5)(6)により後半3つの命題が導かれるところに、私は「面白さ」を感じました。

下のcinderellaの図を動かしてみると、あなたも「面白い」と感じるかも知れません。図2は、図1に点A',F',H',E'を通る円(紫色の円)を加えただけのものです。頂点A',B',C'のどれかを左クリックしながらドラッグすると上のオレンジ色の三角形だけ変形しますが、下に隠れている三角形は固定されています。

例えば、頂点B'を下の三角形の垂心Hの位置を移動させると、紫色の円は点A,F,C,Dを通る円となります。このように、頂点と垂心の置き換え、あるいは頂点どうしの置き換えをマウスで行ってみてください。これらの移動により一つの円から合計5通りの「4点を通る円周」が見つかります。

Javaをインタラクティブ作図用に使えるようにしてください。

図2

このような例をもう一つ紹介しましょう。次の命題は4点A,F,D,Cが同一円周上にあることから容易に示せます。

僊HC∽僥HD

この命題に置き換え(1)から(6)を次のように施すと、合計11個の相似な三角形の組が見つかります。

置き換え「A⇔B、D⇔E」により、「傳HC∽僥HE」
置き換え「B⇔C、E⇔F」により、「僊HB∽僞HD」
置き換え「C⇔H、D⇔E」により、「僊CH∽僥CE」
置き換え「C⇔H、D⇔E」と置き換え「A⇔B、D⇔E」により、「傳CH∽僥CD」
置き換え「C⇔H、D⇔E」と置き換え「B⇔C、E⇔F」により、「僊BH∽僞BF」
置き換え「A⇔H、E⇔F」により、「僣AC∽僞AD」
置き換え「A⇔H、E⇔F」と置き換え「B⇔C、E⇔F」により、「僣AB∽僥AD」
置き換え「A⇔H、E⇔F」と置き換え「A⇔B、D⇔E」により、「僣BC∽僖BE」
置き換え「B⇔H、D⇔F」と置き換えにより、「僊BC∽僖BF」
置き換え「B⇔H、D⇔F」と置き換え「B⇔C、E⇔F」により、「僊CB∽僖CE」
置き換え「B⇔H、D⇔F」と置き換え「A⇔B、D⇔E」により、「傳AC∽僞AF」

やはり、どの証明も難しくはありませんが、一組の相似な三角形の組から11組もの相似な三角形の組が見つかるなんて意外な気がしませんか?垂心恐るべし・・・。

このような例はまだまだありますが、最後に9点円の命題に置き換えを施して何が得られるかを考察しましょう。9点円については「九点円(フォイエルバッハの円)(その1)」を参照して下さい。

辺BC,CA,ABの中点をL,M,Nと置き、線分AH,BH,CHの中点をP,Q,Rとすると、上と同様な考察により、頂点と垂心の置き換えに伴って、他の点たちは次のように置き換わります。

(7) A⇔BのときD⇔E、L⇔M、P⇔Q
(8) A⇔CのときD⇔F、L⇔N、P⇔R
(9) B⇔CのときE⇔F、M⇔N、Q⇔R
(10) A⇔HのときE⇔F、M⇔N
(11) B⇔HのときD⇔F、L⇔N
(12) C⇔HのときD⇔E、L⇔M

この置き換えにより次の9点円の命題はどのように置き換わるかを考えて見ましょう。

命題(c) 僊BCに対して定義される点D,E,F,L,M,N,P,Q,Rの9つの点は同一円周上にある。この円を僊BCの”9点円”という。

(10)の変換「A⇔H、E⇔F、M⇔N」を施してみると、命題(c)は次の命題(c)'に変換されます。

命題(c)’ 僣BCに対して定義される点D,F,E,L,N,M,P,Q,Rの9つの点は同一円周上にある。

このように、9点円を定義する9つの点は順序を変えただけで、集合としては変わっていません。したがって、僣BCの9点円は、僊BCの9点円と全く同一の円であることが分かります。

このようにして、命題(c)に変換(10)(11)(12)を施すことにより、結局、頂点と垂心の間の対称性の考察より、次の命題が証明されてしまいました。

命題(d) 僊BC、僣BC、僣CA、僣ABの9点円はすべて共通である。

この命題は、「九点円(フォイエルバッハの円)(その3)」で紹介した、性質そのものです。ぜひ、このリンクによりページを移動して、記事の中のcinderellaの図を動かして、命題(d)を確かめてみてください。

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