垂心と外接円の美しい関係

垂心と外心を描いてみると互いに相似な三角形が現れることを、「垂心と外心に隠れている合同または相似な三角形」で紹介しましたが、三角形の外接円を描いてみると、新たに合同な三角形と平行四辺形が現れます。しかも、この性質はオイラー線と九点円の証明の鍵になる重要な性質です。今回はこれらの美しい関係を紹介しましょう。

1.垂心と外接円に隠れている合同な三角形

三角形の垂心とは「各頂点から対辺へ下ろした垂線の交点」でした。僊BCの頂点A,B,Cから対辺への垂線の足をそれぞれD,E,Fとおき、さらに垂線と外接円との交点を順にD’、E’,F’とおきます。次の図1をご覧になってください。図1に内部を3色に塗り分けられた合計12個の三角形があります。このうち同色の三角形は互いに合同または相似の三角形を表しています。

そのうち、三角形ABC内部の6個の三角形については「外心と垂心に隠れている合同または相似な三角形」において説明したました。この6個の三角形も含め、僊BCの外部にある6個の三角形の合同、相似関係について、以下の(1)(2)(3)が成り立ちます。

(1) 僊FH≡僊FF'∽僂DH≡僂DD'
(2) 傳FH≡傳FF'∽僂EH≡僂EE'
(3) 傳DH≡傳DD'∽僊EH≡僊EE'

図1の頂点A,B,Cのどれかを左クリックしたままドラッグして、三角形を変形できます。12個の三角形のうち、同色の三角形どうしが常に合同または相似の関係を保っていることが観察できます。

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図1

上の図において三角形の合同関係から得られる次の関係にも注目しましょう。

(4) 点Dは線分D’Hの中点である。
(5) 点Eは線分E’Hの中点である。
(6) 点Fは線分F’Hの中点である。

この関係は九点円の存在の証明にとって重要になります。

2.垂心と外接円に隠れている平行四辺形と長方形

今度は、垂心Hと各辺の中点L,M,Nを結び、その延長線と外接円の交点を、次の図2のように、それぞれL',M',N'とおきます。すると、図2の通り、紫色、赤色、緑色に内部が塗られた3つの平行四辺形が現れます。なかなか美しいですよね!

(7) 四角形AHBN'、四角形BHCL'、四角CHAM'は平行四辺形をなす。したがって、点L,M,Nは、線分HL',HM',HN'の中点である。

(証明) 点Aを通り辺ACに垂直な直線と、点Bを通り辺BCに垂直な直線との交点をKとする。この定義と垂心Hの定義により、直線AHと直線KB,および直線AKと直線HBはそれぞれ互いに平行であるから、四角形AHBKは平行四辺形である。それゆえ、∠AHB=∠BKAである。
一方、∠AHB=∠DHE=180°−∠BCAでもあるから、∠BKA+∠BCA=180°が導かれ、4点A,B,C,Kは同一円周上にあること、すなわち、点Kは外接円上にあることが示された。
さらに、平行四辺形AKBHの対角線はそれぞれの中点である点Nで交わることから、結局、点Kは直線HNと外接円との交点N’に一致しなければならない。よって、四角形AHBN’は平行四辺形である。他の場合も同様に示される。(証明終)

図2に示されている通り、3つの平行四辺形の内部を、それぞれ紫色、赤色、緑色に塗って図示しました。図2の頂点A,B,Cのどれかを左クリックしたままドラッグすると動かすことができます。

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図2

さらに上図(図2)には、3つの長方形が隠れているのですが、見つけられますか。次の図(図3)をご覧になれば、お気づきになると思います。

 四角形ACL'N'、四角形BAM'L'、四角形CBN'M'は長方形をなす。

これらの長方形を図3に図示しました。これらの3つの長方形は互いに重なり合うので、長方形の内部を透明度をもつ色(紫色、緑色、オレンジ)で塗り分けました。図の頂点A,B,Cのどれかを左クリックしたままドラッグすると動かすことができます。

Javaをインタラクティブ作図用に使えるようにしてくだい。

図3

3.オイラー線の証明

三角形の垂心と外接円に隠れている平行四辺形(図2)が分かると、次のオイラー線の存在が容易に証明できます。(オイラー線については、「オイラー線」を参照して下さい。)

定理 三角形ABCの外心(O)、重心(G)、垂心(H)は一直線に並び、重心Gは、線分OHを1:2に内分する。(この直線をオイラー線という。)

平行四辺形からオイラー線を証明する図を図4に示しました。この図4をご覧になりながら以下の証明を追ってみてください。

(証明) 外心の定義「3辺の垂直2等分線の交点」、及び、垂心の定義「3頂点から対辺への垂線の交点」より、図4のように、直線OLと直線AHは平行です。点Lは平行四辺形BHCL'の対角線の交点なので、L'L:L'H=1:2です。したがって、儉'LOと儉'HAは相似比1:2の相似な関係にあるから、OL:AH=1:2となります。
一方、重心Gは中線ALを2:1の比に内分するので、今得られたOL:AH=1:2の関係と、∠OLG=∠HAG(平行な2直線OLとAHの錯角)により、儖LG∽僣AGが示されます。とくに、∠OGL=∠HGAから、3点、O,G,Aは1直線上にあります。また、その相似比1:2に注意すれば、OG:GH=1:2も分かりますね。(証明終)

補足 ベクトルの内積を利用するシンプルな証明も知られています。

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図4

4.九点円の証明

上の1節の性質(4)(5)(6)と、2節の性質(7)を利用すると、九点円の存在が容易に証明できます「九点円(フォイエルバッハの円)(その1)」参照)。以下の証明を読む前にこれらの性質を確認しておくと理解しやすいかも知れません。

右図で、僊BCとその外接円が図示されています。頂点A,B,Cから対辺へ垂線を引き、その交点(垂心)をH、垂線の足をそれぞれD,E,F、3辺BC,CA,ABの中点をそれぞれL,M,Nとおき、
直線HD,HE,HF,HL,HM,HNの延長線と外接円の交点を、右図のようにD',E',F',L',M',N'とおきました。

性質(4)(5)(6)より、
F'F=FH、D'D=DH、E'E=EH
が成り立ち、性質(7)より、
N'N=NH、L'L=LH、M'M=MH
が成り立ちました。右図で状況をご覧になって下さい。

それでは、九点円の定義です。(九点円(フォイエルバッハの)(その1)」より再掲)

定理 三角形ABCについて、三辺BC,CA,ABの中点をL,M,N、頂点A,B,Cそれぞれから垂線を下ろし、その足をD,E,F、垂心Hと頂点A,B,Cそれぞれとの中点をP,Q,Rとおくと、9点L,M,N,D,E,F,P,Q,Rは同一円周上に位置する。(9点が並ぶ円のことを”九点円”という。)

上の図から分かるように、僊BCの外接円上の6個の点D',E',F',L',M',N'を垂心Hを中心に1/2倍に縮小移動すれば、僊BC上のD,E,F,L,M,Nの6点の上に移動します。同時に、この縮小移動により、頂点A,B,Cも線分AH,BH,CHの中点P,Q,Rの上へと移動します。

このとき、外接円はどこに移動するでしょうか?外接円も垂心Hを中心に縮小移動しますが、この縮小された円は、結果として点D,E,F,L,M,N,P,Q,Rの合計9個の点を通ることになります。すなわち、この縮小された円こそ九点円に他なりません。すると、九点円の半径が外接円の半径の1/2倍であることと、その中心が外心と垂心の中点であることも自明になります。(「九点円(フォイエルバッハの)(その3)」照)

それでは、垂心Hを中心とする1/2倍の縮小移動を実際に行ってみましょう。そのために、次の図5をcinderellaで作りました。

Javaインタラクィブ作図に使えうにしてださい

図5

凾`BCと外接円と、9点円を定義する9個の点D,E,F,L,M,N,P,Q,Rは定理の通り作図しました。また、直線HD,HE,HF,HL,HM,HNと外接円の交点を図のように点D',E',F',L',M',N'とおいています。それ以外に、水色の円、図の左上に線分、その上に4つの点があります。

4つの点のうちオレンジ色の大きめの点(点W)をマウスで左クリックしながらドラッグすると、水色の円が連動して動きます。この点Wを、縮小移動をコントロールする点と考えてください。点Wを線分上で左(または右)に動かすことによって、垂心Hを中心に水色の円が拡大(または縮小)移動します。

まず、点Wを線分上の点Xに移動させると、水色の円は外接円に重なります。この円は点D',E',F',L',M',N',A,B,Cを通っています。次に点Wを右に移動し、点Yへ移動させます。外接円にあった水色の円は垂心Hを中心に1/2倍に縮小され、図の点D,E,F,L,M,N,P,Q,Rを通る9点円ができました。9点円の中心(緑の点)も外心と垂心のほぼ中点にありすね。この移動を目にすれば、9点円の存在は自明に感じてしまいそうです。(ちなみに、点Wを点Zまで移動すると、水色の円は垂心Hの1点に縮んでしまいます。また、点A,B,Cのどれかを左クリックしながらドラッグすると三角形を変形できますよ。)

補足:三角形の垂心と外接円上の動点の中点の軌跡が9点円であると解釈することもできます。

9点円は実に不思議な図形です。その不思議さをもっと知っていただくために、「9点円(フォイエルバッハ円)」の(その1)から(その5)までをご覧になって下さい。

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